この度、アグネス吉井はミラノ・トリエンナーレとテアトロ・グランデに招聘していただき、ミラノとブレシアの2都市でパフォーマンスを行ってきました!
せっかくなので、今回は番外編としてイタリア出張の様子を簡単にですがレポートします。
5月9日 夜 成田空港を出発
実は2人とも海外に行くのは10年以上ぶり。
パスポートとワクチン接種証明書を握りしめてドキドキしながら、無事に諸々の手続きを通過しました。
11時間半のフライト後、中継地・ドバイに到着。
そしてまたドバイから飛ぶこと、約6時間半……
5月10日の15時頃、ミラノ・マルペンサ空港に到着!
空港まで、通訳の原田さんが車で迎えにきてくれました。
原田さんは、トリエステ在住のコントラバス奏者。
前半3日間の通訳+アテンドを担当してくださいました。
めちゃくちゃ仕事がデキる方で、もちろんイタリア語はネイティブなみにペラペラ。
※ブログの他にも「こじらせコントラバス」というYouTubeチャンネルを日本語でやってらっしゃいます!
今回の渡航期間中、日本からサポートしてくれる制作会社カタリストの福岡里砂さんと、現地通訳の原田さん、そして後半に登場するもう一人の通訳あきこさんによる、超強力なサポート体制が組まれました。(+通訳のお2人をコーディネートしてくれた、イタリアで様々な活動をする並河咲耶さんも何かと支えてくださいました)
田舎から出てきたばかりの高校3年生みたいなアグよし(30代中盤)の2人を、頼れる大人たちが代わるがわる助けてくれる…という構図。ありがたい限りです。
5月10日 夕方 ミラノのホテルに到着
ホテルで劇場関係者にご挨拶して、原田さんと少し打ち合わせをしたあと、まずは2人でホテル周辺を散策しました。
この時点でイタリアの街に関して我々が気づいたことを、いくつかお伝えします。
ポプラの綿毛
でっかい綿毛がそこら中に浮遊しており、歩いていると服にくっつきます。
ポプラの木の綿毛自体に害はないのですが、イタリア各地で1ヶ月くらいフワフワと舞い続けるそうです。
(これを最初の項目に挙げるほど、我々にとってはインパクトがあったんです。「なにこれ?」と思いました。)
犬の多さ
犬を見かける確率が、体感では日本の5〜10倍。
公園の敷地では、散歩してる犬が常に視界に入り続けます。
どこを見ても犬、犬、犬。
特に大型犬が多いです。
駅構内や電車の中、お店の中にも普通に犬がいたりします。犬に寛容な社会。
筋肉愛
公園で筋トレやランニングをしている人が多いです。
筋肉=美 という意識がかなり強いみたい。みんなお尻がプリっとしています。
夜は遅くまで明るい
これは軽めの夕飯でパニーニを食べている様子ですが、20時過ぎでこの明るさ!
なので夜は遅くまで食べて飲んで、その代わり朝はやや遅め…という感じが普通みたいです。
5月11日 ブレシア会場リハーサル
今回のパフォーマンス、本番はミラノ2日間→ブレシア1日という日程でしたが、リハーサルはブレシア→ミラノの順で、1日ずつ行いました。というわけで、この日は朝からブレシアへ移動します。
ホテルの最寄り駅・カドルナから、地下鉄でミラノ中央駅へ。
ここから高速鉄道で、ブレシアへ向かいます。
ブレシアではまず、テアトロ・グランデを見学させてもらいました。
そして、テアトロ・グランデから車で移動すること15分。
炎天下の中、ブレシアの公園「Parco Castelli」で下見とクリエーションを終えたあとは、
ミラノに戻ってジェラートを食べました。おいしかったです。
5月12日 ミラノ会場リハーサル
ミラノでのパフォーマンスは、トリエンナーレ劇場から地下鉄+徒歩で約40分の場所にある、通称「Parco Martesana」という公園で行いました。
どうしてブレシアでもミラノでも劇場や中心街から少し離れた公園でパフォーマンスを行うことになったかというと、
「中心街だけではなく、郊外にもアートを届けたい」
「普段あまりアートを見に行かない層の人たちにもアートに触れてほしい」
というような主催者側の意向があったからです。なるほど〜。
さて、この頃になると、ミラノの街の特徴も少しずつわかってきました。
主な公共交通:メトロ(地下鉄)、トラム(路面電車)、バス
切符はメトロ・トラム・バスの間で共通です。1日や3日の乗り放題券もあり、便利。
ただし路線や駅の関係が結構複雑です。通訳さんのアテンドがなければ、自力での移動はおそらく無理でした。
ミラネーゼの移動:車、チャリ、電動キックボード
ミラノに着いた時は「路上駐車が多すぎる」と思ったのですが、
そうではなくて、道路脇に車を停められるスペースが設定されているとのこと。
また、シェアサイクルや、シェア電動キックボードもよく見かけました。
坂が少ない街なので、自転車移動が便利だそうです。
イタリアの野鳥
鳩(ドバト)は普通によくいます。顔も挙動も日本と全く同じで、見てると安心します。
スズメやカラスもいるけど、微妙に顔や体型が日本とは違ってました。
(他にもムクドリに似た鳥や、大声でひっきりなしにさえずる鳥もいましたが、名前はわからずじまいでした)
ご飯がうまいとは、つまりどういうことか
もちろんパスタやピザも美味しいんですが、何よりも素材に対するこだわりを強く感じました。
野菜や果物の味が濃い。
固いパンも、塩も、油も、それだけで美味しい。
不思議と日本食が恋しくはなりませんでした。
きっとこれら全てが、イタリアの気候に合った食事だったのだと思います。
5月13日 ミラノ本番1日目(の前に観光)
「ミラノに来たらこれだけは」ということで、ドゥオーモ(大聖堂)を観に行きました。
地下鉄のドゥオーモ駅から地上に出るとすぐ、目の前にそびえ立っています。
高さ108mとのことなので、日本で想像するなら 秋葉原UDX(高さ107m)が石で出来ていて、豪華絢爛な形状で、壁に彫刻が並んでいる感じ…… とでも言えば異様さが伝わるでしょうか。(伝わらないか)
あまりに大きく現実感が無さすぎて、
いくら写真を撮っても「インターネットで見たことある画像」にしかならない、というバグが発生。
予約すればドゥオーモの中にも入れますが、時間の都合で入らず。
隣接するガレリア(アーケード)にも行きましたが、とにかく観光客が多くてディズニーランドみたいでした。
ところで、この日から通訳+アテンドは歌手の小里明子(こざとあきこ)さんにバトンタッチしています。
あきこさんは長年ミラノに在住し、歌手として主に現代音楽で活躍するほか、日本民謡をアレンジしたギタリストとのデュオ[»YouTube]もやっていらっしゃるそうです。
ドゥオーモとガレリアの喧騒に疲れた我々を、あきこさんが音楽家らしいお気に入りの場所に連れていってくれました。
ここは、かのレオナルド・ダ・ヴィンチが設計した、会議場?取引所?の跡です(詳細を忘れました)。
天井のアーチの音響効果により、小さな声で喋っても離れた場所から聞きとることができるとか。
ナイス・地味スポット。
アグよし的にも、こういう場所が好みです。
さて、
忘れかけていましたが、この日はパフォーマンス本番・初日です。
なのに何故こんなにのんびり観光していたのかというと、
ミラノは日が暮れるのが遅い と先ほど書きましたが、
そういうわけで本番の開始時間が17時に設定されていたんです。
(1日4回パフォーマンスなのに!)
16時ごろパフォーマンス会場に移動して、明るいうちに本番を終えました。
5月14日 ミラノ本番2日目(の前に観光)
この日は朝9時からPCR検査を受けなければならず…(日本帰国のために必要)、
しかもホテルを12時にチェックアウトしてしまったので、お昼寝できる場所もなく。
ヒマになってしまったので、また少し観光をしました。
まずは、クイズ番組でよく出てくる「サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会」。
この中にある「最後の晩餐」を見るには何ヶ月も前から予約が必要で、
ミラノに住んでいる人でも滅多に見られないそうです。
そんなサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会を外から眺めたあとは、近くにある別の教会に移動。
サンマウリツィオ教会でフレスコ画を見ながらパイプオルガンの生演奏を聞いたり、
中庭に展示されている古代ローマ時代の遺物を見たりしました。
休憩してからパフォーマンス会場の公園へ移動して、ミラノでのパフォーマンス2日目を無事に終えました。
最後の回では、アグよしにしては大変珍しくカーテンコールをいただきました。よかったよかった。
そして本番直後の余韻に浸る間もなく、すぐにお迎えの車に乗り込み、ブレシアへ移動!
この日の夜はブレシア泊でした。
5月15日 ブレシア本番
先ほどからずっと「ブレシア」と書いてしまってますが、
おそらく「ブレーシャ」の方が正しいです。Brescia。
今さらすみません。(この後もブレシア表記で行きます)
ブレシアは工業で発展した街だとか。ミラノに比べると正直、ちょっとだけ田舎です。
ミラノからの絶妙な距離感といい、鉄道駅から少し離れたところに市街地の中心があることといい、
名物がギョウザに似ていると言えなくもない包みパスタ(Casoncelli Bresciani)だったりと、
日本の関東で例えるなら宇都宮っぽい感じかと。
移民は多いですが、アジア人は珍しがられます。
観光客がいないわけではなさそうですが、ミラノに比べると断然「地元民」の率が高そうです。
ミラノももちろん魅力的でしたが、ある意味「普通の街」であるブレシアでもパフォーマンスができたことは、我々にとって非常に有意義でした。もやよし的にも、観光地でない土地の空気を体感しておくことは重要です。
とはいっても、ブレシアだって由緒ある大きな街なので、こんな立派な大聖堂があるわけですが……
パフォーマンス本番を終えたあとに時間があったので、大聖堂の中に入ってみることに。
すると、ちょうど日曜日だったので、ミサをやっていました!
巨大な空間に響き渡る合唱。
荘厳で、緊張感があり、ただならぬ雰囲気。(写真はありません)
音と光の不思議なパワーに包み込まれる衝撃体験でした。宗教ってすごいなぁ…。
ブレシアの名所を軽く観光したあとは、
あきこさんと3人で、テアトロ・グランデのスタッフに教えてもらったお店でディナーをいただきました。
ちなみにこの日も含めて食事をする時は、ほとんどお店のテラス席でした。
夕方から夜になると風が涼しくて、気候がとにかく気持ちよかったです。
5月16日 昼 ミラノ・マルペンサ空港を出発
ブレシアのホテルを朝早くに出発して、車で送ってもらうこと約2時間。
ミラノ・マルペンサ空港から飛行機に乗り込み、 イタリアをあとにしました。
ちなみに今回の行き帰りのフライトは、アラブ首長国連邦の航空会社・エミレーツ航空にお世話になりました。
【エミレーツ航空 豆知識】
機体に前方と下方を映すカメラが搭載されており、
リアルタイムの映像を座席のモニターで見ることができる。
【ドバイ国際空港 豆知識】
空港の中に、ゲート間を移動するためのミニ電車がある。
テーマパークみたいで面白い。
翌 5月17日の夕方、成田空港に帰ってきました。
東京はしばらく雨が続いていたとのことで、飛行機を降りた瞬間の モワッ… とした湿気に笑ってしまいました。
空港で受けたPCR検査は2人とも陰性。
やよい軒で焼き魚定食を食べて、無事に家まで帰り着きました。
怪我や病気もなく、ロストバゲージや盗難にも遭うことなく、こうして無事に行って帰ってこられたこと。
そもそもコロナ禍や国際情勢により状況が日々刻々と変化し続ける中で、海外でのパフォーマンスを実現できたことに、心から感謝しています。
ここまで様々な形でサポート・応援して下さった皆様のおかげです。ありがとうございました!
(いつかまた海外に行ける機会がありますように…!)
おまけ:イタリアで踊った感想
イタリアに到着して2日目、ブレシアでのリハーサルを終えた日の夜、我々は困惑していました。
というのも、いつの間にか感覚がズレてしまって、アグよしらしい創作ができる状態の身体では無くなってしまっていたのです。アグよしのパフォーマンスは事前準備ができず、現場でのクリエーションが全てです。現地入りしたのに、このままの状態では良い踊りを作るどころか、まともに踊ることもできない。そんな危機感を覚えました。
どうも飛行機や空港+イタリアでの時間を過ごしている間に、感覚が「人間」にフォーカスされるように、普段とは異なるチューニングがされてしまったようなのです。
(普段と異なる状況に遷移したので当たり前かもしれませんが、なにせ初めてのことだったので、勝手がわかりませんでした。)
原因としては、以下のようなことが考えられました。
- 日本で過ごしている時よりも、周囲の人間の挙動を警戒し、気を配っていたこと。
- 英語とイタリア語の音に囲まれて、自分でも時々英語で発話していたこと。
- 都市の造り、特に建物による影響。イタリアの建物にみられる素材、大きさ、デザインが、「環境」と「人間」を分ける思考を促しているように感じた。
アグよしのダンスは、空間の全ての要素に対して、出来るだけ平等にアンテナを張るような感覚で踊られます。そうやって感覚した世界の中で、自分たちも要素の1つになり、影響を周囲と交換し合うからこそ、ああいう感じの踊りになるのです。「人間」だけにフォーカスしてしまうと、うまく踊ることができません。
頭を悩ませてそのことに気づいたあとは、慌てて色々な調整作業を行ない、感覚のチューニングを合わせ直して、どうにか本番に間に合わせることができた……と、思います。
アグよしが普段から何に依拠して踊っているのかを、改めて自覚した出来事でした。
※パフォーマンス本番の様子は アグよしInstagramのプロフィールページ にある「ハイライト」に残してありますので、ぜひご覧ください!